カテゴリー: 知的障害

2020年8月17日

「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」㉞

◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。

これまで原告側の主張と裁判所の判断を見てきました。

今回は被告(保険者:国側)の主張を見ていきましょう。

原告の状態を障害認定基準における2級の状態像に照らし合わせると、次の点で2級に該当しない。

1.知的障害は軽度と認定されている

2.基本的な日常生活動作について、自発的にできることが少なくない

3.原告の障害を理解できる者との会話もある程度可能である

4.勤務先の援助及び配慮の下とはいえ,勤務を継続して一定の実績をあげている

5.原告の生活行動範囲は障害等級2級の例示として挙げられている範囲を超えている

次回に続く

2020年8月14日

「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」㉝

◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。

前回までの検討を踏まえ、裁判所は次のとおり判断しました。

原告の本件基準日における障害の状態は,障害認定基準にいう「知的障害があり,食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって,かつ,会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため,日常生活にあたって援助が必要なもの」に該当するか,又はこれと同等程度のものであり,障害等級2級に該当する程度のものであるというべきである。

次回に続く。

2020年8月9日

「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」㉜

◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。

これまで日常生活能力の判定及び日常生活能力の程度を細切れに見てきましたが、一覧で見られるよう羅列してみます。

<日常生活能力の判定>

(食事)

診断書 自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

裁判所の評価 診断書の判断は相当

(身辺の清潔保持)

診断書 自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる

裁判所の評価 診断書の判断は相当

(金銭管理と買い物)

診断書 助言や指導をしてもできない若しくは行わない

裁判所の評価 診断書の判断は相当でないとまでは言えない

(通院と服薬)

診断書 助言や指導があればできる

裁判所の評価 診断書の判断は相当

(他人との意思伝達及び対人関係)

診断書 助言や指導をしてもできない若しくは行わない

裁判所の評価 診断書の判断は相当とは言い難いが相当性を失うものではない

(身辺の安全保持及び危機対応)

診断書 助言や指導をしてもできない若しくは行わない

裁判所の評価 診断書の判断は相当とは言い難く問題点を指摘していると理解するのが相当

(社会性)

診断書 助言や指導をしてもできない若しくは行わない

裁判所の評価 診断書の判断は相当

<日常生活能力の程度>

診断書 知的障害を認め,日常生活における身のまわりのことも,多くの援助が必要である。

裁判所の評価 診断書の判断は相当

次回に続く。