2020年7月3日
「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」⑪
◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。
次の論点であるコミュニケーション面についてはどうだったのでしょう。
論点3
裁判所が診断書により認定した事実から原告の就労に関する様子を再現します。
<初診時所見> 会話は成立せず
<現症日の障害の状態> 対人コミュニケーションも困難である。
この論点に関して両者の主張は
原告(請求者・不服申し立て側)
意思疎通についても,単純で具体的な指示をやっと理解できるという状況であり,言葉の意味や相手の意図をくみ取ることはできず,自身の考えや意図を他者に伝えることも基本的にはできないため,意思疎通はごく単純なものに限られる。
被告(国側)
家族や原告の障害を 理解できる者との会話もある程度可能である。 ここでも両者の評価はまったく異なります。
次回に続く
2020年7月2日
「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」⑩
◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。
この論点に関して両者の主張は
原告(請求者・不服申し立て側)
障害認定基準では,「労働に従事していることをもって,直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず,現に労働に従事している者については,その療養状況を考慮するとともに,仕事の種類,内容,就労状況,仕事場で受けている援助の内容,他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること」と定められており,保護的な就労や配慮された就労はしているが日常生活が自立できない場合は障害等級2級に当たるとされる。
原告は就労しているが,従業員全員が障害者手帳所持者である障害者の雇用の促進等に関する法律44条に規定する会社であり,障害者対応の専門的知識を有する社員から手厚い保護・援助・配慮を受けて初めて働くことができている状態であることから障害等級2級に該当する程度のものである。
被告(国側)
制服管理作業の仕事をしており,細分化された業務を上司の指示のもとローテーションにより行い,障害者に係る継続的な就労支援や勤務先の援助及び配慮の下とはいえ,勤務を継続して一定の実績をあげていることから、2級の障害の状態とされる「日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」には及ばないというべきである。
ここでも両者の評価はまったく異なります。
次回に続く
2020年7月1日
「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」⑨
◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。
次の論点として就労についてはどうだったのでしょうか。
論点2
裁判所が認定した事実から原告の就労に関する様子を再現します。
原告は就労支援センターを利用し,高校卒業後,障害者の雇用の促進等に関する法律44条1項に基づき,厚生労働大臣の認定を受けた会社に,障害者雇用枠にて,1年単位の有期雇用の契約社員として採用された。
その後,現在に至るまで,本件会社の客室乗務員の制服等管理の部署にて,月に20日程度勤務し,
①着用後の制服,スカーフ等をたたむ係
②上記制服等に縫い付けられている個人バーコードを読み取る係
③上記を番号順に並び替える係 ④クリーニング店より仕上がってきた制服のバーコードを読み取る係
⑤上記を種類ごとに分ける係
⑥上記を番号順に並び替える係
⑦上記番号を個人別に集めてカゴに入れていく係
⑧出来上がった制服等をカウンターで渡す係
といった細分化された業務を,管理職員の指示のもとローテーションにより行い,毎月18万円から20万円の収人を得,その他賞与を受けてきた。
本件会社は,現場の従業員は,その全員が知的障害者のほか,身体障害者も含む障害者手帳所持者であり,管理職員の全員が障害者の雇用の促進等に関する法律79条所定の障害者職業生活相談員である。
原告は,自宅から本件特例子会社まで,約1時間の時間をかけて通勤している。
往路は,基本的に父親に車で駅まで送ってもらい,駅から電車に乗って出勤するが,父親の都合がつかない場合は,一人で電車を乗り継いで出勤する。
また,復路は,一人で又は職場の同僚と電車を乗り継ぎ,自宅までは一人で帰宅している。
次回に続く