2020年7月24日

「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」㉖

◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。

「身辺の安全保持及び危機対応」についての医師の判定について、裁判所は書証及び証人の証言から次の通り判断しました。

原告は通勤時において,決められた電車1本が遅れるだけで混乱して,原告母に助けを求めてくるとされ,母の供述によれば,高校生時代のエピソードから身辺の安全保持及び危機対応を十分にすることができない面があることがうかがわれる。

もっとも他方で,通勤時の電車の乗り遅れについては原告母に連絡して指示をあおぐことはでき,その他,前記の他人との意思伝達及び対人関係について説示したところにも照らせば,本件診断書において,身辺の安全保持及び危機対応,すなわち,事故等の危険から身を守る,通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて,適正に対応することができるなどの能力について,助言や指導をしてもできない若しくは行わないとされているのは,これを文字どおりにとれば相当とはいい難く,上記のような問題点を指摘したものと理解するのが相当である。

つまり、診断書の評価は相当ではないが、身辺の安全保持及び危機対応能力については十分ではないと判断しました。

次回に続く。

2020年7月23日

「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」㉕

◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。

「身辺の安全保持及び危機対応」について

<診断書記載の医師の評価>

助言や指導をしてもできない若しくは行わない。

<証人原告母の証言>

通勤時、決められた時間の電車に乗ることしかできず,1本電車が遅れるだけで混乱して,母にスマートフォンを操作して電話又はメールで助けを求めてくるとされている。

この点について裁判所はどう判断したのでしょうか。

次回に続く

2020年7月21日

「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」㉔

◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。

「他人との意思伝達及び対人関係」についての医師の判定について、裁判所は書証及び証人の証言から次の通り判断しました。

書証及び証人の証言からすれば,本件診断書における他人との意思伝達及び対人関係,すなわち,他人の話を聞く,自分の意思を相手に伝える,集団的行動が行えるなどの能力につき,助言や指導をしてもできない若しくは行わないとされていることは,にわかに首肯し難いといわざるを得ない。

しかし、原告母等が繰り返し又は常に付き添って助言や指導を行うことを前提とするものであるし,不適応な面について指導したけれども改善しなかった面もある原告の特性を理解している限られた人々との間ではある程度の意思疎通や対人関係の構築ができるとしても,広く第三者との間で自立的におおむね適切な意思疎通や対人関係の構築ができるとまでは言い難い。

したがって、診断書の評価は、なお相当性を失うものではない。

評価は消極的ではあるが、診断書の判断は正当であると判断されました。

次回に続く。