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2020年7月4日

「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」⑫

◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。

ここで本訴訟の流れを時系列で見ると

H25.12.25 裁定請求

H26.3.3 不支給処分

H26.3.24 裁定請求

H26.7.23 棄却

H26.7.26 再審査請求

H27.3.31 棄却 

 H27.9.1 提訴

H30.3.14 判決

提訴後のH28.9.1に、各都道府県における障害基礎年金の認定事務の実態調査の結果,精神障害及び知的障害の認定において,地域によりその傾向に違いがあることが確認されたことに伴い,専門家検討会による検討を経て,「国民年金・厚生年金保険精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が施行されました。

原告側は、仮にこのガイドラインのルールを当てはめると,日常生活能力の程度及び日常生活能力の判定平均を前者が4,後者が約3.57で,障害等級1級又は2級に該当することになる旨を主張しました。

この主張は検討対象から外されましたが、今後不服申し立てをされる方々の事例の参考にはなるものと思われます。

次回に続く

2020年7月3日

「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」⑪

◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。

次の論点であるコミュニケーション面についてはどうだったのでしょう。

論点3

裁判所が診断書により認定した事実から原告の就労に関する様子を再現します。

<初診時所見> 会話は成立せず

<現症日の障害の状態> 対人コミュニケーションも困難である。

この論点に関して両者の主張は

原告(請求者・不服申し立て側)

意思疎通についても,単純で具体的な指示をやっと理解できるという状況であり,言葉の意味や相手の意図をくみ取ることはできず,自身の考えや意図を他者に伝えることも基本的にはできないため,意思疎通はごく単純なものに限られる。

被告(国側)

家族や原告の障害を 理解できる者との会話もある程度可能である。 ここでも両者の評価はまったく異なります。

次回に続く

2020年7月2日

「障害基礎年金不支給処分取消訴訟(知的障害)」⑩

◆平成30年の東京地裁判決を取り上げます。

この論点に関して両者の主張は

原告(請求者・不服申し立て側)

障害認定基準では,「労働に従事していることをもって,直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず,現に労働に従事している者については,その療養状況を考慮するとともに,仕事の種類,内容,就労状況,仕事場で受けている援助の内容,他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること」と定められており,保護的な就労や配慮された就労はしているが日常生活が自立できない場合は障害等級2級に当たるとされる。

原告は就労しているが,従業員全員が障害者手帳所持者である障害者の雇用の促進等に関する法律44条に規定する会社であり,障害者対応の専門的知識を有する社員から手厚い保護・援助・配慮を受けて初めて働くことができている状態であることから障害等級2級に該当する程度のものである。

被告(国側)

制服管理作業の仕事をしており,細分化された業務を上司の指示のもとローテーションにより行い,障害者に係る継続的な就労支援や勤務先の援助及び配慮の下とはいえ,勤務を継続して一定の実績をあげていることから、2級の障害の状態とされる「日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」には及ばないというべきである。

ここでも両者の評価はまったく異なります。

次回に続く