2019年10月25日
「不支給決定の理由」
障害年金に係る保険者の処分には、不利益処分といわれるものがあります。
代表例としては、新規裁定請求に対して、保険者が障害等級に該当しないと判断した場合の不支給決定があります。
不支給の決定がありますと、請求人または代理人あてに、厚生労働大臣名で『不支給決定通知書』が郵送されてきます。
この処分通知書には、不支給を決定した旨と、支給しない理由が記載されています。
しかし、例えば障害基礎年金であればこの理由の箇所には、“請求の障害の状態が国民年金法施行令別表に規定する障害に該当しません”程度の記述しかありません。
これではなぜ不支給になったのかわかりませんね。
この保険者の決定は処分行為であることから、不服があれば審査請求に進めるわけですが、審査請求書には請求の趣旨及び理由の記載が必要なことから、審査請求書を作成する前提として、不支給処分の詳細な理由を把握する努力が必要なのです。
ところが、来年4月からは、適用した認定基準や該当する事実関係を踏まえた判断結果を記載した「理由付記文書」を作成して送付する運用を開始するようです。
新しい運用に注目していきたいと思います。
2019年10月24日
「障害年金受給と扶養」
障害をお持ちのお子様が障害年金の受給権を取得した場合に、税と健康保険の扶養の扱いはどうなるか?
◆税と健康保険で被扶養者の捉え方は異なる 今回は障害をお持ちのお子様が障害年金の受給権を取得された場合、税と社会保険(健康保険)両面からお子様を扶養されているご両親にどんな影響があるかを考察します。
◆こんなケースを前提として進めます。
ご両親と障害をお持ちのお子様の3人暮らし。
お父様は会社勤めで、お母様は専業主婦。
お子様は障害者枠で企業に勤務しているが、社会保険未加入。
お父様は毎年の年末調整でお子様を対象に扶養控除と障害者控除を受けてきた。
お父様は協会けんぽの被保険者で、お子様は被扶養者として認定されている。
今回お子様の障害基礎年金の受給権が認められた。
とします。
◆税の扶養への影響は?
所得税、住民税の算定における被扶養者の所得要件は、38万円以下とされています。
障害年金は非課税所得ですので、所得の概念としてはゼロです。
したがって、お子様が障害年金を受給されても、お子様の給与所得が前年の年末調整同様ボーダーラインを超えない限り、扶養控除、障害者控除ともOKです。
お父様の税への影響は無いと言えます。
◆健康保険の扶養への影響は?
健康保険の被扶養者の認定に係る収入要件は、障害者の場合年間180万円未満です。
税は所得で判定しますが、健康保険は『恒常的な年間収入の見込み額』で判定します。
しかも、この収入には非課税所得である障害年金も含まれます。
捉え方が収入ですから。
2019年度の障害基礎年金の給付額は、1級が975,125円、2級が780,100円です。
つまり、お子様の給与収入見込み額が、(1,800,000円-上記の年金給付額)の範囲に納まり、かつ、総収入見込み額がお父様の収入の半分以下であれば、被扶養者の認定がなされることになります。
仮に、この制限を超える場合は、単独で国民健康保険に加入せざるを得ません。
国保税は世帯主に納税義務がありますので、お父様の負担が増えることになります。
この辺りの知識を整理して、的確にご対応いただくと無駄な出費を抑えることができます。
浮いたお金はお子様の口座に入金しておいてあげたらいかがでしょう。
2019年10月23日
「法定免除」その②
保険料を納付した方が良いのか…
◆お子さんが障害基礎年金の受給権を取得したら保護者が検討すべきこと
前回の続きです。
法定免除で保険料を支払わなかった場合、将来障害基礎年金が支給停止となった場合に支給される老齢基礎年金の額は確実に障害基礎年金を下回ることになります。
このため、法定免除対象者でも将来の老齢基礎年金受給の可能性も想定して、保険料を納付 することが認められています。
有期認定の場合は、更新の際の級落ちでの支給停止など生涯に渡り障害年金を受給することが保障されていないため、このリスクヘッジをどうするかです。
つまり、65歳以上で障害基礎年金を受給できないリスクに備えて、今から保険料を納付しておくか否かの判断が必要ということです。
なお、「永久認定」されている方は、所得制限を超過しない限りは生涯に渡り障害基礎年金を受給できることからこの検討は不要であり、保険料を納付する必要はありません。
現行制度では、10年以内なら追納することで老齢基礎年金の減額を防ぐこともできることから、判断を先送りにすることもできます。
老齢基礎年金には付加年金や振替加算などオプションもあることから、単純な想定はできません。
この辺りは、年金事務所または年金に精通した社会保険労務士に相談されてから判断されることをお勧めします。
障害年金の受給権を取得しても安堵せず、長期的にお子様の将来を考えていきましょう。